お気に入りの香りは、私たちの心と身体を癒してくれますよね。
アロマテラピーで使用される精油(エッセンシャルオイル)も、例えば、ラベンダーの香りで癒されたり、柑橘系の香りでリフレッシュできたりします。
また、精油の中には植物の有効成分が高濃度に含まれているため、キャリアオイルなどの他の素材で希釈して肌に使うことで、保湿効果や殺菌・抗炎症効果が得られるものもあります。
では、こうしてアロマが私たちに様々な効果をもたらしてくれるのはなぜでしょうか?
この記事では、アロマの中でも特に精油に注目し、その成分が私たちの心と身体に働きかける「メカニズム」とその「効果」について解説していきます。
アロマテラピーの効果の仕組みは?
自然療法であるアロマテラピーで使用する精油(=エッセンシャルオイル)。
その成分が私たちの心と身体に伝わる仕組み・性質には、「鼻から脳に伝わる」ものと「皮膚に浸透して伝わる」ものがあります。
鼻から脳へ伝わる仕組み
私たちは、「香り」を脳で判断しています。
「香り」は窒素や炭素などの小さい化学物質の集合体でできており、その数は数十万種類とも言われるほどです。
例えば、柑橘系のベルガモット精油は、リモネン・酢酸リナリル・リナロールなどの成分が複雑に混ざり合うことで「ベルガモットの香り」を特徴づけています。
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これらの香り成分は、鼻から嗅ぐと鼻腔の奥の嗅上皮に届いて電気信号に変換されます。
その後、脳の嗅球というところに伝わり情報整理され、においのイメージをつくる「嗅皮質」に到達します。
嗅皮質から脳の各部分に伝わる経路は主に3つです。私たちは、それぞれの経路で導かれる情報が結びつくことで香りを認識しています。
偏桃体で好き嫌いなどの感情が呼び起され、視床下部では自律神経系、内分泌系(ホルモン)、免疫系に作用。
ラベンダー=癒し、ベルガモット=さわやか・リフレッシュのように、「香りのイメージ」が作られ、味覚などほかの感覚からの情報を統合。
「昔、家の近くに咲いていた花の香りに似ている」など「記憶」の情報が呼び起こされます。
特に自律神経系や内分泌系、免疫系は、体内の環境を一定に保ち続けようとする「ホメオスタシス」の働きに大きく関わっています。
例えば、自律神経は、昼間や活動している時に活発になる「交感神経」と、夜間やリラックスしている時に活発になる「副交感神経」の2種類があり、それぞれがバランス良く作用することで、私たちの健康が保たれています。
心身の疲れや昼夜逆転の不規則な生活が原因で自律神経の働きが乱れると、不安や緊張感など精神的な不調だけではなく、頭痛やめまい、胃もたれ、胸やけなど、全身に影響が出る場合があります。
そのため、自律神経系・内分泌系・免疫系のバランスを整える「視床下部」に作用する「香り」はとても重要です。自分にとって「心地よい香り」を日常に多く取り入れて、心身のバランスを整えましょう。
皮膚に浸透して伝わる仕組み
精油は分子が小さく、親油性なので、ホホバオイルなどの植物油で希釈して肌に塗ると浸透しやすい性質を持っています。
皮膚に浸透する精油は、肌の細胞に直接作用したり、毛細血管やリンパ管から血液に入って全身に働きかけたりすることができます。
中には、ニキビの抗炎症作用や肌のコラーゲン・ヒアルロン酸産生促進作用が報告されている精油もあり、「香り」だけではなく、美肌効果の研究も日々進められています。
例えば、ティートリー精油を使用した実験で、総ニキビ数が使用前より減少したことが報告されている事例があります。
(参考:(公社) 日本アロマ環境協会|ティートリー精油の抗ニキビ作用 )
アロマテラピーの主な効果とおすすめの精油
アロマテラピーの効果①:疲労回復
精油の成分が私たちの体内に伝わる仕組みとしては、鼻から脳に伝わるルートや、皮膚を通じて全身に伝わるルート、肺から全身に伝わるルートなどがあります。
また、精油の中には、神経の過活動を鎮める鎮静作用や幸福感をもたらす成分が含まれているものがあり、これらの成分が嗅覚などを通じて脳に伝わることで、精神的な疲労回復に役立つと言われています。
さらに、血行促進作用や抗炎症作用を持つ精油は、筋肉疲労や筋肉痛といった肉体疲労の回復をサポートしてくれます。例えば、レモングラス精油などに含まれるシトラールやリモネンは、血行促進作用を持つ成分として有名です。
運動前後の芳香浴や疲れた後のマッサージに精油を取り入れることで、疲労回復を早める効果が期待できます。
実際に、運動前後のアロマ吸入により、運動時のエネルギー代謝や骨格筋に対するストレス反応の軽減が示唆された報告もあります。
(参考文献:矢野琢也・岡田昌義(2007)「アロマによる嗅覚刺激を応用した高強度運動能力の向上とその効果」,『Aroma research : journal of aroma science technology and safety』 8(4),p384-389,フレグランスジャーナル社.)
以下を参考に、心の疲労回復や体の疲労回復におすすめの精油を取り入れてみましょう。
なお、精油の原液は刺激が強いため、マッサージなどで肌に使うときには必ずキャリアオイルや水性の素材で希釈しましょう。
AEAJ日本アロマ環境協会では、ボディ使用時は1%以下、フェイス使用時は0.1~0.5%以下の濃度を目安に、精油を希釈して使用するよう定めています。(精油0.05ml/滴)
心の疲労回復におすすめの精油
- レモン
- グレープフルーツ
- ペパーミント
など
体の疲労回復におすすめの精油
- スイートマージョラム
- レモングラス
- ジュニパーベリー
など
アロマテラピーの効果②:自律神経を整える
アロマテラピーの主な効果の1つに「自律神経の調整」があります。体内の環境を一定に保とうとする「ホメオスタシス」の働きに関わっている自律神経が乱れると、精神的な不調だけではなく、頭痛やめまい、胃もたれや胸やけなど、全身に影響が出る場合があるため注意が必要です。
自律神経には、昼間や活動しているときに優位になる「交感神経」と、夜間やリラックス状態のときに優位になる「副交感神経」の2種類あり、2つがバランス良く働くことで私たちの健康が保たれています。また、精油の中には、交感神経や副交感神経の働きに作用するものがあるため、自律神経の調整に役立てることができます。
自律神経の調整(副交感神経を優位)におすすめの精油
- ラベンダー
- ゼラニウム
- ローマンカモミール
- スイートオレンジ
など
※特にスイートオレンジは、落ち着きと適度な高揚感をもたらすと言われており、自律神経の悩みに効果的です。
自律神経の調整(交感神経を優位)におすすめの精油
- グレープフルーツ
- ローズマリー
- レモングラス
など
アロマテラピーの効果③:ストレスの軽減/解消
ストレスは自律神経の乱れにつながり、心の不調だけではなく、体にも悪影響を及ぼします。イライラや不安、緊張などの負荷を感じたときには、なるべく気持ちにフタをせず、セルフケアの時間を作りましょう。
ネロリのように幸福感をもたらす香りや、フランキンセンスやサンダルウッドなどの深い呼吸を促す香りが、ストレスを和らげてくれるはずです。
また、ストレスは自律神経の働きにも関わるため、上記で紹介した「自律神経の調整におすすめの精油」を楽しむのもおすすめです。
ストレスの軽減/解消におすすめの精油
- ネロリ
- フランキンセンス
- サンダルウッド
など
アロマテラピーの効果④:リラックスしたいとき
リラックスしたいときには、過敏になった神経の働きを穏やかにしてくれる鎮静作用を持つアロマが効果的です。
上記で紹介した自律神経を調整する精油のうち、副交感神経を優位にするものを積極的に選びましょう。副交感神経を優位にすることでリラックスを体感できます。なお、次の精油も癒しの時間に適したアロマなので、好みに合わせて楽しんでみてください。
リラックスしたいときにおすすめの精油
- ローズオットー
- イランイラン
- クラリセージ
など
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アロマテラピーの効果⑤:不眠解消/ぐっすり眠りたいとき
自律神経の乱れは、睡眠トラブルの原因の1つでもあります。ストレスなどが原因で夜間も交感神経が活発な状態が続くと、「寝つきの悪さ」や「睡眠の質低下」につながるからです。そのため、睡眠トラブルに対しても副交感神経に作用して、交感神経の働きを穏やかにする精油が効果を発揮します。
以下のおすすめの精油も安眠を促す人気のアロマなので、お休み前の芳香浴などに取り入れてみましょう。数種類の精油をブレンドして楽しむのもおすすめです。
ぐっすり眠りたいときにおすすめの精油
- ラベンダー
- ベルガモット
- スイートオレンジ
など
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アロマテラピーの効果⑥:集中力を高めたいとき
アロマテラピーの効果はリラックスやストレス解消のような癒される効果を得られるだけでなく、「集中力を高める」「やる気を高める」などの効果を得ることもできます。
成分的には「交感神経」を活性化させるアロマを選ぶことで脳を活発な状態へ導き、集中力を高めてくれるとされています。
このように、交感神経に作用するアロマ、副交感神経に作用するアロマを使い分けできるようになると、アロマテラピーもより楽しめるようになってきます!
集中力を高めたいときにおすすめのアロマ
- ペパーミント
- ローズマリー
- フランキンセンス
など
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手軽にできるアロマの楽しみ方
ここでは、初心者でも気軽に試せるおすすめのアロマの楽しみ方をご紹介します。
手軽なアロマの楽しみ方①:コットンやハンカチ
ティッシュやコットン、ハンカチなどに精油を1~2滴垂らし、机や枕元に置いて気軽に香りを楽しみましょう。
精油によっては衣類がシミになるものもあるので、衣類に使う際は目立たないところで試すなど、注意して使いましょう。
手軽なアロマの楽しみ方②:マグカップのお湯に垂らして
マグカップや洗面器に半分ほどお湯をはり、精油を1~2滴垂らすと、蒸気で香りを素早く広げることができます。
やけどに気を付け、容器に顔を近づけ過ぎないようにしながら楽しみましょう。
使用後はマグカップなどの容器をよく洗い流してください。できれば、芳香浴専用の容器を作っておくのがおすすめです。
手軽なアロマの楽しみ方③:アロマストーン
アロマストーンは、精油を直接垂らして香りを楽しむことができるアイテムで、素焼きや石膏でできたものがあります。
火や電気を使わないので、アロマ初心者でも安心の楽しみ方です。
精油をアロマストーンに1~2滴ほど染み込ませたら、あとはお部屋に飾るだけ!
花や羽の形などの可愛くておしゃれなものもあり、インテリアに合うものを探すのも楽しそうですね。
手軽なアロマの楽しみ方④:アロマディフューザー
市販のアロマディフューザーを使うと、スチームとともにお部屋に香りを拡散することができます。お部屋を加湿しながら、香りを楽しめるのが嬉しいですね!
使用する精油の量は1~5滴程を目安に、少しずつ試してみましょう。
また、平らな場所など、安全を考えて置き場所を決めることが大切です。
手軽なアロマの楽しみ方⑤:フットバス/アロマバス
無水エタノール5mlと精油1~3滴を混ぜ合わせたものを、洗面器のお湯に入れます。
いすに座った状態で洗面器に足を入れると、香りを楽しみながら、ゆっくり身体を温めることができます。
精油は水に溶けないため、必ず先にエタノールと混ぜてからお湯に入れましょう。
また、全身の疲れを癒す、アロマバスを楽しむこともできます!
全身浴で使う際には、無水エタノール5mlと精油1~5滴を予め混ぜ合わせ、浴槽のお湯(約200l)に入れましょう。
お気に入りの香りに包まれてリラックスできる、おすすめの方法です。
アロマテラピーの効果まとめ
アロマテラピーには疲労回復や自律神経を整える効果が期待できますが、それ以外にも多岐にわたって私たちに癒しを与えてくれます。
ストレスが多い社会で、これからますます価値観が多様化してくると、その分生き方も複雑になっていき今よりも不調な状態が増えるかもしれません。
日常的にアロマを取り入れることで自分を乱さずに日々を過ごすことができるので、気になる方はぜひ今から取り入れていただければと思います。