ぐっすり眠ることは、私たちの心と身体を休めるために、とても大切ですよね。
睡眠不足は、肥満や生活習慣病のリスクを高めるだけではなく、抑うつ状態など精神面にも影響を及ぼすとされているため、毎日を元気に過ごすには良質な睡眠が欠かせません。
しかし、ストレスや生活習慣の乱れが原因で、「なかなか眠れない」、「たっぷり寝たのに疲れが取れない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、睡眠をサポートしてくれるアロマと、その効果的な使い方などについてご紹介します。
なお、ここで登場するアロマオイルは、自然療法である「アロマテラピー」で使用する精油(エッセンシャルオイル)を指しています。
アロマが良質な睡眠に効果的な理由は「自律神経」
睡眠におすすめのアロマを紹介する前に、なぜアロマが良質な睡眠をとるために効果的なのかについてご説明します。
心身を休めるために欠かせない睡眠ですが、そのカギを握っているのが「自律神経」です。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。
昼間や活動している時には「交感神経」が、夜間やリラックスした状態の時には「副交感神経」が優位になり、それぞれがバランス良く働くことで、私たちの健康が保たれています。
ところが、ストレスや生活習慣の乱れにより、夜間も交感神経の働きが優位な状態が続くと、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりします。
これが睡眠の悩みを引き起こす原因の一つです。
精油の中には、この交感神経や副交感神経にアプローチする成分を含むものがあり、「副交感神経」に働きかけるものを選ぶと、リラックス状態に導き、睡眠をサポートしてくれます。
良質な睡眠におすすめのアロマ5選
では、具体的にどのアロマを選ぶと良いのでしょうか。
ここでは、私たちの睡眠をサポートしてくれる、おすすめの精油を5つご紹介します。
なお、ここでおすすめする精油のほか、「リラックスできる香りはこれ!おすすめアロマ10選」の記事でご紹介した精油もリラックス効果を高め、睡眠との相性が良いものなので、参考にしてみてください。
睡眠におすすめのアロマ①:ラベンダー
ラベンダーは、万能の精油と呼ばれ、幅広い効果を発揮してくれるアロマです。
美しい紫色の花を咲かせることから、観賞用としても人気ですし、スキンケア商品にも多く配合されているので、馴染み深いアロマですよね。
花から採れる精油のフローラルで優雅な香りは、女性を中心に人気が高く、緊張やストレスを和らげて気持ちを落ち着かせてくれます。
副交感神経の働きを優位にしてくれるため、安眠効果が期待でき、睡眠中の芳香浴で質の良い睡眠とすっきりとした目覚めが得られたという報告もあるほどです。
睡眠におすすめのアロマ②:スイートオレンジ
スイートオレンジは、柑橘系のさわやかな香りの中に、ほのかな甘さが感じられる男女問わず人気の精油です。
リラックス効果と適度な高揚効果があるため、就寝前だけではなく、憂鬱な時に気分を明るくしたり、緊張をほぐしたりして、くつろぎ感を与えてくれます。
ストレス解消の効果があり、就寝前に浮かんだ不安などを和らげてくれるのも特徴です。
また、就寝前や就寝中にスイートオレンジ精油の芳香浴を行ったところ、副交感神経の活動が有意に増加するとともに、翌朝もすっきりとした目覚めが得られたという報告があります。(出典:オレンジ・スイート精油がもたらす就眠前不安への生理的影響)
睡眠におすすめのアロマ③:スイートマージョラム
スイートマージョラムは、地中海の東部原産で、料理用のハーブとしても馴染みある植物です。現在は、ヨーロッパや北アフリカなどで栽培されています。
葉から得られる精油は、温かみと甘さに加え、ややスパイシーな印象のある香りが特徴で、リラックスしたい時にとても効果的です。
副交感神経の働きを優位にしてくれるほか、血行を促し身体を温めてくれる作用もあるため、就寝前のひとときにおすすめの香りです。
また、スイートマージョラムの香りとともに入浴することで、血行促進効果により、むくみを解消できるのも嬉しいポイントです。
さらに、ストレスからくる頭痛や呼吸器の炎症を緩和する効果もあるといわれています。
睡眠におすすめのアロマ④:イランイラン
イランイランは、黄色の長い花びらが垂れ下がるようにして咲くのが特徴的で、フィリピンの言葉で「花の中の花」という意味を持ちます。
花から採れる精油は、フローラルでエキゾチックな甘い香りがして、香水などにも使われています。
鎮静作用や神経強壮作用があり、気持ちを落ち着かせてくれるので、緊張や不安でなかなか眠れない時の強い味方です。
ストレス性の動悸や不整脈を落ち着かせ、血圧を下げる働きも。
また、女性ホルモンのバランスを整える働きもあり、肌荒れやPMS(月経前症候群)などの不調を改善してくれるため、女性にとって心強いアロマです。
※特に妊産婦の方は、女性ホルモンに影響を与えるアロマの使用を控えましょう。
睡眠におすすめのアロマ⑤:クラリセージ
クラリセージは、南ヨーロッパ原産の植物で、「オニサルビア」という別名を持ち、様々な色の花を咲かせます。
幸せホルモン「オキシトシン」の分泌を促す作用があり、自律神経のバランスを整えたり、ストレスを緩和して気持ちを明るくしたりしてくれます。鎮静作用により、イライラや緊張・不安も鎮めてくれるので、就寝前の使用にも適しています。
また、女性ホルモンに似た働きをする成分が含まれているため、女性特有の不調も緩和してくれるアロマです。
肌の調子を整える働きもあるため、トリートメントに使用するのもおすすめです。
睡眠力を高めるアロマの使い方
睡眠時におすすめのアロマをいくつかご紹介しましたが、実際にどのように使えばいいのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
アロマストーンやディフューザーを使って香りを楽しむのもおすすめですし、より効果的に精油を使うために、次のように工夫してみても良いでしょう。
ブレンドアロマ
睡眠時におすすめのアロマは、1種類だけでも効果を発揮してくれますが、リラックス効果や安眠効果のある精油をいくつか混ぜ合わせて使う、ブレンドアロマもおすすめです。
最近では、雑貨屋などでも「おやすみブレンド」といった名称で、いくつかの精油を組み合わせたブレンドアロマが手に入るようになったため、活用するのもいいですね。
自分でアロマをブレンドする場合は、まずは2種類から行いましょう。
睡眠におすすめのブレンドレシピは次のとおりです。
柑橘系のすっきり感と甘さをもつスイートオレンジと、ローズに似た香りを持ち清潔感を与えてくれるゼラニウムは相性抜群です。
深い呼吸を促し、心を落ち着かせてくれるため、ぐっすり眠って疲れを癒すことができます。
ラベンダーとオレンジは、それぞれ安眠やリラックスしたい時に高い効果を発揮してくれる精油ですが、香りの相性も良いので、ブレンドするのもおすすめです。
市販のブレンドアロマオイルでもよく見かける組み合わせなので、試してみてください。
リラックス効果が期待できるベルガモットは、スイートオレンジと比べて苦味があります。そこに、ほんのり甘さのあるスイートマージョラムをブレンドすることで、苦味が和らぎ、より心地よい香りを楽しむことができます。
市販のブレンドアロマもご紹介!
アロマバス
1日の疲れを癒すお風呂時間に、アロマバスを楽しんでみてはいかがでしょうか?
睡眠にも効果のあるアロマを使うことで、よりリラックスできておすすめです。
また、精油の原液は刺激が強いため、肌に使用する時には植物油や水性の素材で希釈して使いましょう。
AEAJ日本アロマ環境協会では、ボディ使用時は1%以下、フェイス使用時は0.1~0.5%以下の濃度を目安に、精油を希釈して使用するよう定めています。(精油0.05ml/滴)
ぐっすり眠れるアロマバス
用意するもの
- 精油…1~5滴
- 無水エタノール…5ml
- 重曹…大さじ2
- 用具…計量スプーン、ガラス棒、容器
※精油は水に溶けないので、必ず先に無水エタノールと混ぜてから入れましょう。
※重曹はなくてもOK。肌へのお湯の感触を柔らかくする効果があります。
※40℃を超える熱いお湯に浸かり、体温が下がり切らないまま布団に入ると、寝つきが悪くなる場合があるため注意しましょう。また、眠れない時にフットバスやハンドバスを行い、リラックスしてみるのもいいでしょう。その際も、上記の希釈濃度を守り、自分が心地よいと感じる量で行うようにしてください。
リードディフューザー
快適な睡眠環境を整えるために、リードディフューザーを寝室に置いておくのもおすすめです。リードディフューザーとは、ビンに入れたアロマオイルの中にスティック(リード)を挿して香りを楽しむアイテムです。
リードが吸収したアロマオイルが気化することで、香りがお部屋に広がります。
睡眠におすすめのアロマを使って、次のようにリードディフューザーを作ってみましょう。
相性の良い精油をブレンドしてみてもいいですね!
- 精油…50滴
- 無水エタノール…20ml
- グリセリン…1~2滴
- 用具…ビーカー、ガラス棒、口が狭いビン(遮光性)、リード(竹串や竹ひごなど)
※グリセリンはなくてもOK。アロマオイルが蒸発するスピードを落としてくれるので、香りの広がりを穏やかにし、長持ちさせてくれます。
※アロマオイルの蒸発を防ぐために、直射日光を避けて置きましょう。
アロマを睡眠時に使うときの注意点
植物の力で私たちに働きかけてくれるアロマオイルですが、睡眠時に使用する際にも次のような注意点があります。
①睡眠に適さない香りもある
精油にはたくさんの種類があり、それぞれに違った成分・効能を持ちます。
例えば、今回ご紹介した副交感神経の働きを優位にしてくれる精油とは対照的に、交感神経に働きかける精油を選ぶと、目や頭が冴えて寝つきが悪くなってしまうため、リラックスしたい時や就寝前・就寝中の使用には適していません。
スイートオレンジと同じ柑橘系の香りでも、グレープフルーツ、レモンなどがこれに当たるので気をつけましょう。そのほかにも、スパイス系の香りやローズマリー、レモングラスといった人気の香りも同様です。
好みの香りが目的に合っているとは限らないので、気をつけて使いましょう。
②心地よい程度に楽しむ
質の高い睡眠をとるためには、特にリラックスできる環境作りが欠かせません。
アロマの香りが強すぎると、かえって気分が悪くなったり、頭痛につながったりして、眠れない原因になるため注意が必要です。
アロマによっても香りの強さが異なるので、種類によって使う量を調節しましょう。
睡眠時は特に、ほのかで心地よいと感じる程度に香りを楽しむことがとても重要です。
③全ての人がアロマを使用できるわけではない
アロマを安全に生活へ取り入れるためには、健康状態や体質、感受性などに配慮することが大切です。特に、妊産婦や病気治療中の方などは、必ず医師へ相談してから行いましょう。
既往歴のある方や高齢者も、少量から試して使用することが大切です。
また、3歳未満の子どもは芳香浴以外は行わないようにし、3歳以上の場合でも、精油は通常の10分の1~2分の1程度で使用します。ペットは私たちと身体の作りが異なるので、安易に使用するのは避けましょう。
「まずはここから!アロマ初心者のための香りの楽しみ方とアロマオイルの選び方」では、精油を購入する時や扱う際に注意していただきたいポイントも紹介しています。ぜひ、チェックしていただき、安全にアロマを楽しんでください。
アロマを睡眠時に使っても効果がないことはある?
大前提として、アロマは治療薬ではなく、自然植物の力で睡眠をサポートしてくれる、補助的なアイテムであるという正しい理解を持つことが大切です。
病気が疑われるような場合は、必ず専門医に診てもらってください。また、良い睡眠環境を作る要素は、「香り」だけではありません。
次のような点に問題がないかも確認し、良質で心地良い睡眠を目指しましょう。
室温や湿度
室内温度は、夏場25~28℃、冬場18~23℃を目安に調整しましょう。
また、湿度は50~60%を保つことが理想です。
寝具
枕やマットレスなどの寝具が自分に合っているかどうかも、良い睡眠のために欠かせない条件です。
寝具が自分に合っていないと、呼吸が楽にできなかったり、寝返りしづらかったりするため、睡眠トラブルの原因になります。
最近では、専門店も増えているので、自分と相性が良い寝具をオーダーメイドしてみるのもいいかもしれません。
このほかにも、寝る前には強い光が直接目に入らないように、間接照明などのほのかな灯りで過ごすことも大切です。
アロマは正しく使えば、就寝前や就寝中のリラックスタイムを心地よく演出し、私たちの良質な睡眠をサポートしてくれる心強いアイテムです。
睡眠に効果的な精油の中にも様々な種類があるため、あなただけのお気に入りを見つけてみてください。